ひき肉のメモリー

 昨日は久しぶりに客先に赴いての打ち合わせとなった。近所のお客さんなので、自転車で行った。昼前に着いてランチに行くのが毎度の定番コースなのだが、珍しく他の業者の方と同席となった。その会社のホームページを制作している担当者さんで、人当たりの良いおしゃべり上手な男性だった。

 クルマで向かったのはうどん屋だったが、人気店なので昼どきは長蛇の列である。ボードに書かれた名前を見る限りかなり待ちそうだ。そこで別の店に向かった。ハンバーグの美味い店があるので「そっちにしよう」ということだ。埼玉の辺境の市なのだが、飲食店の質は意外にも高い地域なのだ。

 ハンバーグ屋も混んではいたが、ひと組しか待ってなかったのですぐに案内された。そのハンバーグは箸を入れると肉汁がほとばしるタイプのジューシーなヤツだ。牛脂を包み焼きしているのだろうか。飛び出してきた肉汁はとても甘い。そして価格設定が凄く安い。チェーン店を凌駕する価格だ。

 その店自体は、都内と千葉に店があり、この埼玉の店が三店舗目だということだ。店の人に聞いたわけではなく、グルメ検索サイトの情報である。いわゆる全国展開するようなチェーンではなく、個人経営でエリアを絞って出店している感じなのか。美味しく安価なので、どんどん出店して欲しい。

 ただ、この店に来るまでの車中でお客さんから「安くて美味いハンバーグがある。ビックリするぞ」と散々言われていたので、僕の中でひとつのイメージができてしまっていた。僕には理想のハンバーグがあって、それはかつて千葉の松戸にあった個人店のものだったが、完全な完成形だったのだ。

 そのハンバーグはもう二度と食べられない。その店自体がないからだ。それが埼玉の辺境に転生したような気になってしまい、それが目の前に現れると思い込んでいた。肉汁ジュワッと系のハンバーグは、僕の理想のソレとは似ても似つかない。だから、美味しいと思いつつ寂寥感も湧き起こった。

僕の理想には遠いが確かに美味いハンバーグ。これは250gで900円である。