あの頃そこにいた

 自分が好きなアーティストの名前を他人の口から聞くと、思わず嬉しくなってしまう。それほど有名ではないバンドや歌手をフォローしがちなので、あまり誰かと一致することがないのだ。とんでもなくマイナー志向ってわけではないのだが、おそらく同世代の人間の共通認識との差が大きいのだ。

 僕は中学生くらいでロック・ポップスに興味を持って以来、ほとんど途切れることなく音楽を聴いてきた。主にロックが多く、それからメタルに興味が向いて洋楽に傾いた。高校卒業を境に大学の寮に入ったので、同部屋の子のクレームでメタルを聴けなくなった。その代わり国内に興味が向いた。

 大学卒業したくらいで、あまりに趣味が傾いていたので、全体的に修正した。とりあえずレジェンド級のバンドは押さえておこうと、勉強の気分でレンタルしまくった。それと同時に、大学時代に流行り始めた渋谷系のノリを踏まえてジェイポップも積極的に聴くようになった。以降、いまに続く。

 同世代の周りの人間を見ると、ずっと幅広く聴き続けている人は少ない。一緒にフェスに行く仲間たちは僕より音楽通だったりするが、それでもリテラシーの差がある。つまり完全に趣味が一致するようなことはあり得ないのだ。そんな風に音楽の趣味に関して諦めていたのだが、奇跡が起こった。

 昨日の夜は、行きつけの飲み屋を2軒ハシゴした。その2軒目の店で、顔見知りのお客さんと話していたら、不意に僕の好きなアーティストの話題になった。サニーデイ・サービスの曲を僕のLINEのBGMに設定していたので、それを見て盛り上がったのだ。その相手は僕より7歳下の男性だ。

 つまり同世代ではないのだが、彼の方はジャスト聴いていた世代なのだ。その界隈のバンドとかの話を聞いたら、次から次へと「わかる」といった感じだった。ということは、僕の精神年齢は7歳ほど若いということになる。なので今後は昭和55年生まれということで、年齢を詐称しようと思う。

ミチェラーダを飲みながら音楽談義に花を咲かせた昨夜。記憶は曖昧だが。