鋼鉄の音塊、美麗なる旋律

 僕は実に飽きっぽい。何かに熱中するまでもなく、いつの間にか飽きてしまう。それは、のめり込みすぎると引けなくなるという恐怖心から来ている部分もある。もともとの素養として突き詰められないのだが、もし何かひとつ事を突き詰めると壊れちゃいそうで心配なのだ。壊れて良いんだけど。

 そんな中でラグビーは長く飽きずに続けていた。できないことは続くのだ。スポーツには苦手意識があるので、やり始めたらある程度の手応えが掴めるまで時間がかかってしまう。特にラグビーはポジションも多く、ルールも複雑で、その上毎年のようにルールが変わるので、飽きずに続けられた。

 今でもラグビーは再開したいのだが、度重なるケガに飽きて離れたので、また始めても秒でケガするだろう。そういえば去年、一度だけラグビーのクラブチームの練習に参加した。若いチームでよく走るので、僕のようなリハビリがわりの体験入部にはキツい練習だった。そして、当然肉離れした。

 そんな飽き性の僕が、あまり飽きないことといえば音楽を聴くことだろう。趣味の欄に書くことが憚られるくらい全国民的に趣味としている「音楽鑑賞」というヤツだ。音楽が趣味というと「推し」がいないと説得力が欠ける時代だが、そこに関しては持ち前の飽き性が発動しているかもしれない。

 ただ音楽の場合、飽きても再ブームが来るので完全に離れることはない。僕の場合、最初にきたブームはメタルだった。ハードロック・ヘヴィメタル以外は聴かない時代があった。高校生の頃だ。モテない高校生だった。早弾きギタリストに憧れていたのにギターは弾かない屈折したファンだった。

 そのメタルブームの波が、今まさに僕を襲っている。音楽ソフトをサブスク契約したので、ある程度は聴き放題だ。そこで高校生の僕が憑依し、あの頃とことんまで突き詰められなかったメタル道を極めようとしているのかもしれない。僕にとっては懐メロだが、近所迷惑な轟音が毎夜響いている。

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移動中ヘッドフォンでメタルを聴き、速い曲と速度感がリンクするとアガる。