フォークソングってなんだ

 音楽を聴くと言われると、なんとなくポピュラー音楽を聴くのかと思ってしまう。でも、人によって好きなジャンルは異なるので、そこはちゃんと確認した方が誤解なく過ごせる。いつもヘッドフォンをして飲みに来る女性がいて、その佇まいで絶対にロック趣味と確信して話しかけたことがある。

 果たして彼女はクラシックを聴いていた。もちろんポップスも聴くのだろうが、主にクラシックが好きなようだ。その趣味は古いゲーム音楽から来ていると察する。その人はゲームが好きだからだ。つまり、観察していれば想像はできたということだ。想定外の返事で会話が弾まずに気まずかった。

 僕はどのジャンルを聴くかと問われると「何でも聴く」と答えてしまう。しかし、実際にはクラシックやジャズは聴かない。知識のバケモノのような先人がいて、新参者に厳しそうなイメージで迂闊に近寄れないのだ。これはメタルにも言えることだが、メタルは高校から聴いているので怖くない。

 音楽は気分に寄り添ってくれるものなので、その気分に合う曲が選べているうちは風呂敷を広げる必要はないかもしれない。僕の気分がなんとしても「ジャズを」「クラシックを」聴かせてくれと求め始めたら、探せばいい。そしていま、僕が聴きたいと欲しているのはフォークソングなのである。

 厳密なフォークソングというと、アコースティックギターとハーモニカと学生運動のようなオールドスクールなイメージがある。いや、学生運動に関して詳しいことは知らないが、その時代の音楽という印象だ。実生活のリアルに根ざした音楽ということだろう。僕が聴きたいのはそっちじゃない。

 現代のフォークソングというか、優しさと強さを兼ね備えつつ、現代の音楽としての新鮮さを持った新世代のフォークソングがあるんじゃないかという予感のようなものだ。それは、路上でギター1本の弾き語りでやっているからフォークだという意味ではない。もう少しソウルに近い感覚なのだ。

前時代のフォークシンガーは、ギター1本だけ持って単線の電車で上京する。