ディグれば深淵なる沼

 音楽を聴きはじめた頃は、自分の趣味が確立していないので、その指標として雑誌をガイドブックにしていた。最初の頃は、詳しい友達に教えてもらった「FMステーション」というラジオ番組を紹介する雑誌を買っていた。その雑誌には、カセットテープ用のインデックスカードが付属していた。

 その雑誌の表紙には、鈴木英人さんのイラストが使われていた。アメリカの街の風景のような図案で、色彩のくっきりした爽やかなイラストは、80年代を象徴するイメージでもある。まだ音楽探検の入り口をウロウロしている僕にとって、その画風はとても頼りになる「正解」への近道に思えた。

 当初、僕は日本のバンドの情報が知りたくて雑誌を読んでいた。そのうち、それらのバンドが海外のアーティストに影響されて音楽を始めたという話を読むようになる。ということは、大元は洋楽ということになるのか。そんな疑問とともに、国内のバンドを追いつつ、洋楽も横目で意識していた。

 雑誌の情報を元に、ラジオ番組を聴いて音源をチェックする。いま思い返すと貴重な音源もあったような気がする。記憶に残っているものだと、バクチクの日清パワーステーションのライブを覚えている。メジャーデビューして間もない頃のライブだったと思うが、それを聴いてアルバムを買った。

 僕の興味はバンドものから洋楽へ、さらにロックの激しさを追求するに従ってメタルへと変化していく。当時のメタルは排他的な世界観だったので、僕もソレしか聴かない偏狭なリスナーになってしまう。根っからのミーハーが、唯一ハマった沼かもしれない。そして、いまでも帰りたくなる沼だ。

 当時もっと幅広い音楽に触れていれば、もうちょっと深い音楽的な知識を得られたかもしれない。いろんな音楽を掘ることをディグるなどというが、メタルしか掘ってないので底が知れている。そういえば、僕はディグダグというゲームが好きだった。確かにディグダグは地面を掘るゲームだった。

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食欲もまた深い沼。今年に入ってから一向に体重が減らなくなってしまった。