アーバンソウルサバイバー

 音楽を聴くのが好きな一般人なので、日常で無音なことはあまりない。高校生の頃は寝る直前までメタルを聴いていた。睡眠導入にメタルは合わないと思われるかもしれないが、爆音で聴くわけじゃないし、美メロなのでファンタジー系の夢を見そうな予感はある。でも、夢の内容には影響しない。

 メタル期を経て「国内・国外の良い音楽、何でも聴いてやろう」という気分に達したのが20代のなかば辺りだろうか。とにかく片っ端からグッドミュージックを聴いているうちに、結局はビートルズに引き寄せられてゆく。すべてのポップミュージックはそこに行き着いてしまうと思い知るのだ。

 この路線はロック側からのアプローチだと思うが、別のルートもある。バンド系ではなく、個人のアーティストが作る音楽もある。メタルから始まった僕にとっては、個別のアーティストは興味の埒外だった時期が長い。でも、バンド系が解散したら次がないのと異なり、個人には解散がないのだ。

 メタル好きの観点から見ると、個人のアーティストというのは甘いポップス系が多い。その甘さはメロディの良さのことなので、実はメタルの美メロ系とも通底する魅力だったりする。だから、メタル好きならばスウィートなポップスが嫌いなわけがない。恥ずかしがっているだけで、好きなのだ。

 そんな魅力的なポップスの中でも、僕がイチバン好きなアーティストはスティービー・ワンダーだろう。モータウンソウルの中心人物なのでポップスと言い切るのは気が引けるが、ヒット曲のポップさには抗い難い魅力がある。ポップなソウルは、すなわちポップスと言っても差し支えないだろう。

 こうやって、ひとつひとつ紐解くように音楽を聴いていた。僕のようにメタルから始めたミュージックライフを鑑みると、モータウンまで行き着いたのは奇跡のようでもある。でも、僕は音楽誌を買って読むタイプなので、各ライターの敷いたレールに従っただけとも言える。それには悔いはない。

暗闇に近い夜道を散歩しながらブログを更新する中年。足元で黒猫が見ている。