ある種、逆に、あえて

 他人の口癖に難癖をつける人間がいる。それは、その口癖に違和感があるからだ。そういう言い回しをすることで世界観を演出しようとしている感じ、つまりハッタリに見えてしまうと引っかかる。そのハッタリに対して、その都度警告カードを上げる。世の中をさらに生きづらくさせるタイプだ。

 ある時期、僕の周りにこのタイプが多かったので、自分の口癖に対して警戒心がある。なるべく手癖で話さないように、淡々と言葉を発するよう心がける。そうすると、反射的に発したい突っ込みワードが出なくなる。話すリズムが合わないと、盛り上がっている面白い会話にダイブできなくなる。

 それは、結局自分の首を絞める。そんな口癖警察の手を逃れるために、そいつらの小さなミスを責めるようになる。彼らも、自分たちの何者でもなさに落ち込み、その闇から逃れるために周りの人間の言葉狩りをしていたに過ぎないのだ。そんなマウント合戦から逃れるために、人間関係を変えた。

 仲間を整理したおかげで、僕の周囲の仲間は落ち着いた。膨張しすぎていたので、今くらいの関係性がちょうどいいかもしれない。そうやって落ち着いた世界を取り戻した僕だけれど、過去に身についた悪癖は抜け切らない。まだ、口癖の違和感が拭えない。気にしたくないと思うほど、気になる。

 僕の好きな某映像作家のインタビュー動画を観ていたら、やたらと「ある種」という言葉を連発する。これと似た言葉で「ある意味」を使う場合もあるが、どちらも絶対にその文脈で必要な言葉ではない。それは、まさにある種の接続詞なのだが、実際は何も接続しない。ただ言っただけの言葉だ。

 その人の話し方を聞いていて感じたのは、とても正確に淡々と情報量を込めて伝えるタイプだということだ。サービス精神がある。そのために早口になりそうなところを「ある種」でブレスのように切っている感じだ。人それぞれに理由があって口癖を用いるのであれば、そこはそっとしておこう。

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食事にもクセがあり、僕は身についた三角食べのクセがいつまでも抜けない。