壁になった聞く耳

 お悩み相談は受け付けていない僕だけれど、人間的な甘さから垂れ流しの悩みを聞くだけの時間を設けられてしまう時がある。その場限りの優しさで隙を見せてしまい、そこを執拗に突かれてしまう。迂闊だ。この性質は日常だけでなく、仕事の場でも発揮される。それは決して良い意味ではない。

 かつての僕は、場数を踏めばスキルアップできると信じていた。自分にない素養でも、場慣れすることである程度伸ばせると思っていた。そのせいで場違いな会合などに参加させられたり、業界を代表して挨拶をさせられたりするのだ。そんな時はバカ度胸を奮い起こして乗り切るが、成果はない。

 場違いというのは、そこで僕が目立ったところで仕事の評価には繋がらない場所だ。個人的にそこで人脈を築くことは、僕の私的なキャリアには役立つかもしれない。でも、その時の職場での僕の評価には結びつかない。何故なら、その場には誰も知り合いがいないから、社長の耳に入らないのだ。

 そんな場違いポツン会社員時代を通じて僕が得たことは、関係性のない会合に行っても面白いわけがないということだ。誰もが仕方なく行っている業界の会合なのだから、当然楽しいことはない。ソツなくその場にいた証明だけ証拠として残し、変な印象を与えないうちに立ち去るのが得策なのだ。

 数年前の場違い珍プレーの数々は、やはり僕の甘さが生んだ自業自得たちだ。無理にポジティブ変換して「地力が上がる」と思い込んで大勢の前で挨拶してシラけたり、付き合いが広がると信じて飲み会に参加して絡まれたりすることで悟った。自分にできないことを引き受けると大怪我をすると。

 その点、お悩み相談というのは誰にでも起こりうるシチュエーションである。大人の役割であり、持ち回り制の当番とも言える。その悩みの質にもよるのだが、深刻な悩みほど聞く方は無理ゲーに近くなる。その専門家でもなんでもないので、相手の気が済むまで聞き役に徹するのだ。それが大人。

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僕が唯一場違いを感じない場所、それがハマスタ。滅多に行かないけれど。