ランチ、選択の自由

 たまに仕事でよその会社に呼ばれる時があるが、そこでは昼メシの選択が最大の関心事だ。近くに飲食店が多いエリアだと前日からある程度の方向性を決めておく。ある職場では僕がランチを真剣に選ぶ食欲の奴隷ということがバレているので、不本意だがときどき職場の人と同行することもある。

 僕は、食べるものや店を前日まである程度決めていても、当日の気まぐれで変えちゃうのが好きだ。自分に振り回されたい。でも、同行を求められると「どこにします」という話になる。そうすると薄く決めていた店の名前を出すことになる。僕は、宣言した瞬間に興味がなくなる天邪鬼でもある。

 今週は3日ほど、都内東側の下町エリアで事務作業のような業務を手伝っていた。楽な仕事なので、ランチを選ぶ余裕がある。忙しかったり、不慣れな仕事だったりすると食欲も減退する。そんな時でも昼メシは食べるが、そういう心理状態では選択をミスる。安易なチェーン店で済ませたりする。

 以前も、その職場で10日ほどの業務を委託された時に、あるルールでランチを楽しんでみた。毎日、行ったことのない店で食べる新規開拓ウィークである。あれは楽しかった。あれでランチの選択肢が広がった。その中に高級中華の店があったが、マダムの熱気に圧されて再訪する気になれない。

 今週は特に新店を攻めるという気持ちもなく、勝手知ったる店で心安らかなランチタイムを過ごした。あるトンカツ屋では、隣のテーブルの女子の話に聞き耳を立ててしまった。片方はずっと喋っているが、明らかに聞き役の相槌が雑だ。相槌の隙間から「つまんねー」と聞こえてきそうなほどに。

 ランチどきの、会社の同僚と思しき人びとの会話には、こういうことがよくある。片方がひたすら話して、聞き役が打ちひしがれている図だ。そんな健全とは程遠い関係性が、この世界には無数に転がっている。それを見ている僕は、この関係性を作らないために「ひとり」を選択したと強く思う。

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僕がロースカツを激写中も、ずっと隣の女子(片方)は話し続けていた。