優勝できなかったスポーツマン

 僕は後天的に体育会系の学生生活を送るようになった者だが、小学生の頃までは運動神経のかけらもないような子供だった。人一倍高い身長を持ちながら、スポーツに秀でたところが一切なかった。小学生にとっては足の速さがすべての優劣を決めるワケだが、そのレースには参加すらしていない。

 本当は家で絵を描いている方が楽しかったのだけれど、近所の友だちに誘われると遊びに行かなきゃいけない。それはそれで楽しかったのだが、本心ではインドアひとり遊びを欲していたと思う。子供の頃の夢は「マンガ家になること」だった。それは口外していなかったので誰も知らないという。

 学年が上がっていくと、どんどん部活人間の度合いが増していく。大学でラグビーをやるようになるなんて、子供の頃の僕には想像もできなかったことだ。ただ、周りから見れば「デカイからラグビーっぽい」とか言われる。僕の内なる葛藤を知る由もない。誰にも言ってないんだから当然である。

 スポーツに没頭するのは良いことだし、そちらを選択したことに後悔はない。でも、子供の頃の僕が持っていたかもしれない可能性の未来は想像してみる。アート系の将来があったのかなぁと考えてみるけれど、すでに体育脳の僕にはピンとこない。その将来について体育的に判断してしまうのだ。

 根性を基準にして考えてしまうので、子供の僕に対しても「続ける才能がない」と感じてしまうのだ。本当に好きなら続けていただろう。流されてしまったのは、本当に好きじゃなかったからじゃないのか、と問うてしまう。そうやって、子供の頃に言えなかった夢に落とし前を付けることにする。

 身の丈に合うという言葉があるが、身長が高いと自然に周りから運動方面に誘導されるのは仕方ないと思う。サイズもひとつの才能だと言われる。これを自分から言うと負けたような気になるが、人から言われても嬉しくはない。ただ、そういう側面があることも理解しているので受け入れている。

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右に行くか、左を選ぶか。人生の岐路が序盤に出てくることもある。