吐く息は血の匂い
僕にとって最大の課題は、ずっと「走れるカラダ作り」にある。理想は大学生の頃の「どれだけ走っても疲れない体」だが、それは長年の鬼練で手に入れたものだ。卒業してからトレーニングをしていないのだから、簡単には手に入らない。たぶん、そこまで到達することは、今後もないとも思う。
もともと走るのは苦手だ。生まれつき大柄な僕は、幼少期から周りより頭ひとつ抜けた高身長をキープしていた。その大きさに反して、運動神経は人並みだった。周りの大人が期待するよりも低い運動能力なので、ガッカリされることもあったかと想像できる。コチラの自意識過剰かもしれないが。
ただ、子供は本当のことしか言わないし、思ったことはストレートに言ってくる。背の高い僕が、背の低い子供に走り負けるのを見て「大きいくせに足が遅い」と伝えてくる。余計なお世話なのだが、そのストレートさが子供らしさとも言える。僕も子供らしく、ストレートに悲しくなって泣いた。
そんな経験が重なり、僕は運動オンチだと思い込むようになった。でも、子供にとっては受け入れがたいので、小さい頃はなるべく比較されないように逃げていた。幼い男子の価値基準なんて「足が速いか」しかないので、そこで勝負しないということはガキ大将バトルからの敗北を意味するのだ。
あまり意識はしていなかったが、ここが僕の最初の挫折なのかもしれない。でも、弱点は克服したいと思う気持ちはあったので、走力に関してはいつも考えていた。少年野球をはじめた時も、盗塁を狙うなどして自分に自信をつけさせようとした。少年野球の盗塁では、成果は出ないと思われるが。
その後、中学校で陸上部に入ったりしたが、結局、足が速くなることはなかった。せいぜいがスポーツマンの平均くらいだろう。でも、短距離走が速いことよりも、長い距離をひたすら走れる方がスポーツマン的には上位互換だと思う。だから走れるカラダ作りが大事なのだ。その意識だけはある。