言葉に群がるハイエナたち

 特定の業界内だけで通用、または慣例的に使われている符牒のようなものがある。業界用語であったり、書類での指示を簡略化させたマークなどのことだ。そういった符牒を調べている知り合いがいる。そして、僕が仕事でそういう符牒を使っていないかと聞かれた。まったく思い当たらなかった。

 僕は自分のクセを矯正しがちである。手クセでやることは、後々ミスを呼ぶからだ。パターンができると壊したくなる。要領だけでサクサクいける仕事のルーティンを、わざと変えたりする。一人で行なう仕事が多いから、業務を不慣れな状態にすることで必然的にダブルチェック機能が作動する。

 いや、そんな目論見があってのことではないのだが、飽きないようにやり方を変えている。同じ仕事がコンスタントに入らないので、ルーティン化させられない部分もある。でも、我から要領良くやらないように心がけてもいる。つい効率化に走りがちなのだが、効率的にやった仕事は可愛くない。

 手間のかかる作業を増やすことになっても、回り道した仕事はミスが少なく綺麗だと思う。その手間こそが手クセだとも言えるが、仕事に個性を押し込んでいるわけじゃない。プロセスの選択法に僕の個性が、性格が表れている。自分が選んだやり方で仕事できるのは、フリーランスだからである。

 そこで冒頭の話だが、僕が請け負う仕事の業界内には符牒が多くあることは想像できる。でも、僕に振られる仕事においては符牒で注文されるわけじゃないので、こちらも通常のビジネス用語でやりとりする。そこにおいては、特殊なマークや業界用語の類いは介在していないと思っているのだが。

 中にいるとわからない、外から見たら符牒だと思うこともある。先の知人はそう言って、ちょっと考えてみてと宿題を出された。考えるのは楽しいことだが、期待に応えられないのは気が重い。知人と同様に、僕もどちらかというと言葉の人間なので、普段から意識して言葉を発しているつもりだ。

もともとホルモンも肉の捨てる部位を指した「放るもん」から来ているらしい。