ナイトメアフィーバー

 もともと体温が高い方だと思う。平熱で37度近くある。体温が高い方が免疫力が高いというメリットがあると、最近は聞く。実情は知らないけれど、子供の頃から現在に至るまで、僕の平熱は大体そのくらいだ。だから、昨今のようにシビアな感染症対策社会では、微熱と警戒されることはある。

 そんな感じで、僕は熱には耐性があると自覚していた。過信と言っても構わない。平熱が高いんだから、多少は熱があっても元気でいられると思っていた。それは、実際に学生時代は通用していたし、その気持ちで数年前まで当たり前のように生きてきた。その過信が通用しなくなってきたようだ。

 とにかく、微熱があると変な夢を見る。眠る前に「悪夢を見そうだな」という予感がある時もあるし、何ら前触れなく嫌な夜を迎えることもある。それは風邪気味の夜だったり、夜中に寒さに震えてキャッチアコールドしちまうこともある。そして、夢と現実の狭間で最悪の気分を味わってしまう。

 夢は人に語るものではない。ただ、面白ければ言いたくなる時はある。それは、ある種の発想の面白さで、そういう発想が自分の中にあると思うと嬉しくなる。そういう発想のバリエーションとしての夢ならば、なにかのクリエイションに繋がって欲しい。それは普段の思考から派生した創作物だ。

 でも、僕が高熱にうなされて見る悪夢は、そういうポジティブな発想の何かではない。単なる警鐘の類だろう。体の異変を伝えるメッセージなのだと思う。心の異変のようにも感じる。メンタルが傷付けられているのだろう。体と精神の密接な関係は、経年劣化とともにダイレクトに伝わってくる。

 そうやって、嫌な予感として見る夢は、いつも変なリアリティを残してゆく。現実との境目をかするラインで、僕のメンタルを揺さぶる。たぶん僕は、すでに、とっくに病んでる。それは中年の危機というヤツだろう。そこに関しては実感している。医療のバックアップを受ける段階かは知らない。

夢を食う動物はバクだが、写真はインドの山奥で見かけた観光用のヤクである。