異星人同士のすれ違い

 元旦からずっと、大沢在昌の小説を読み続けていた。分厚い単行本を2冊、3日で読み終わってしまった。マトリの潜入捜査と刑事モノの2連発だったので、犯罪者ばかりが出てくる世界にどっぷりハマっていた。そんな最中に見た初夢は事件に巻き込まれるものではなく、なぜか部活の話だった。

 大学の部活に顔を出した僕は、最初はOBの設定だったはずなのに、知らぬ間に選手として試合に出ている。でも、当初のOB設定のまま続いているので、周りの選手は知らない顔の現役選手だったりする。若手に気後れするオジサンの僕は体力も現在同様なので、ちゃんと足を引っ張ってしまう。

 使い物にならない僕は、彼らから嫌われてしまう。あからさまに文句を言われるようになって、僕も頭に来て言い返そうと思うのだが、なにひとつ言葉が浮かんでこない。若い頃は、夢の中でパンチをしようとすると早く動けないという経験がある。それが中年になると、言葉が出てこないようだ。

 夢の中とは言え、学生時代の部活に戻れるのは少し嬉しい。リアル世界の僕がラグビーを再開できる見込みはないが、夢の中なら絶対に怪我しないので思う存分ラグビーができる。そう思って、知らない後輩に嫌われて居場所がない夢の中の世界に戻ってみた。初夢のおかわりを二度寝で実現した。

 半覚醒状態ででっち上げる創作の夢なので、僕の都合で変更可能な妄想の類である。妄想が夢と同化して、再び制御不能な夢の世界に没入していく。そこではやはり、僕は誰からも相手にされない。試合中なので役割に徹すれば認められると思っているのだが、夢でも思うように体は動かないのだ。

 この富士山も鷹も茄子も出てこない夢は、果たして吉夢なのか。後輩に嫌われる夢というのは、最近の酒場で若い店員と話が合わないことの裏返しのような気がする。誰とでも合わせられると過信していた僕の驕りが、いつの間にか生じていた年齢のギャップを広げてしまった。そこの戒めだろう。

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酔っ払って撮った近所の手ブレ写真は、事件の断片のコラージュに使えそう。