野球を嫌いにならないで【後編】

 少年野球時代のトラウマのような経験のせいで野球から離れた僕だが、その後の人生においても折に触れて野球と交わることになる。大学の頃、部活の合間に遊びで野球大会をやったことがあった。久しぶりの打席だったが、先輩の投げる緩やかなカーブが打てず、空振りを繰り返すことになった。

 僕の野球ライフが少年野球で途切れているので、変化球に対応できないのだ。その経験で気がついたのは、これに対策できなければ「野球はモノにならないな」とのこと。そして、そのことで野球と決別できたような気がした。僕にはもう「野球はない」と決めつけ、野球には関わらないと思った。

 大学卒業後に就職した会社には、野球部があった。何か運動したいと思っていた僕は、とりあえず野球部の練習を見に行ってみた。その練習でショートをやらされた。ショートの動きなど、まるで分からない。僕は野球に関して何も知らないのだ。打つことと、自分の守備しか考えてなかったのだ。

 そこで決定的に「野球をやる資格がない」と諦めた。それから15年後、またしても野球が浮かんでくる。向いてないスポーツに対して固執するのは、何度フラれても告白し続けるような感覚か。ケガでラグビーができなくなった僕がセカンドキャリアに選んだのが高校OBで作った野球チームだ。

 そのチームには今でも所属している。相変わらず打てないし、守備にも無理が利かない。すこし走ると肉離れで離脱する。それでも、前よりは楽しめている。スポーツの楽しさというよりも、アクティビティの楽しさに近いかもしれない。それでも、打席に立った時だけは真剣勝負なので集中する。

 最近は草野球にも参加できていない。野球はもっぱら観るだけだ。先日、横浜スタジアムにて観戦してきた。僕が現地観戦すると横浜は負ける。その日も負けた。応援しているチームが負けると、その直後は自分の存在を全否定されたような気分になる。すぐに切り替えるが、連敗すると晴れない。