呪いを解くのは労働

 昨日から仕事に取り憑かれてしまい、頭から業務が離れない。慣れないし得意でもない仕事だから、とにかく早く終わらせたい。その一心で、最速でミスなく仕上げられる方法を模索している。そんな感じで落ち着かないから、つい発注元への電話確認が多くなってしまう。ある種のSOSなのだ。

 そうやって相手を巻き込むことで、仕事のクオリティに手心を加えてもらいたいという下心があるのかもしれない。手心と下心は別に韻を踏んだわけじゃないし、大して上手くもない。ただ、オモシロのクオリティが底付きする程度には平常心を失っている。久しぶりに感じる劣等感に近い感覚だ。

 とにかく疲れる。体は正直なので、不慣れな仕事に拒否反応を示している。でも、僕は限界を超えた先の満足感が嫌いじゃない。痛みなくして前進なし、ノーペイン・ノーゲインというやつだ。ある程度の圧がかからないと、成長は望めないと思ってしまう。もっと効率的な成長法がありそうだが。

 昨日は散々トラブルに見舞われた末に、もうやってられんと家を飛び出した。PCさえあれば仕事は進められるので、酒場で続きをやろうと思ったのだ。結局やるのだ。酒の力を借りて迷いを吹き消した。シラフだと考えすぎてしまうので、そのリミッターを振り切るためのドーピングとも言える。

 酒場のメンツが楽しい話をするのを尻目に、黙々と作業を進めていったら捗った。よく子供が茶の間で勉強すると覚えられると聞くが、その感覚に近い気がする。雑然とした中にいた方が自分の中に閉じこもれるというか、閉じこもっている場面を人に見てもらった方が頑張れるということだろう。

 別に忙しいアピールでもなく、褒めて欲しいわけでもない。ただ、そういう外付けのパワーアップアイテムがないと越えられない山があったのだ。そして、すでにその山は越えた。いま考えているのは、果たしてこの仕事はナンボということだ。ギャラの話を詰めないで受けるのはやめた方が良い。

仕事で行った長瀞の石畳。もはや遠出は仕事がらみのみと成り果ててしまった。