意固地なシスター

 僕には5つ歳の離れた妹がいる。年齢差があるのと、先に嫁いで行ったこともあり、あまり詳しく人となりを知らない。どんな人か分からないのだ。なんとなく地味で、引っ込み思案の陰キャというイメージだった。いや、それほど明確に陰キャと決めつけられるほど、性格を理解できてはいない。

 それほど暗い性格ではないようなので、おっとりした天然という線も考えられる。ただ、昨夜はじめて母親から聞いたところでは、時に意固地でビシッとした意見を言うこともあるそうだ。長年続けていた(と、それも昨日はじめて聞いた)ピアノ教室でも、講師に意見を言う方だったとのことだ。

 結婚した後のことだが、同じアパートの隣の部屋に子供が集まるようになったらしい。大人がいない時間は心配なので、外で遊んでいる子供を見張るでもなく見ていたら向かいの住居の老人から「うるさいんだよ」と文句を言われたらしい。その際も「うちの子じゃありません」と言い返したとか。

 ま、当たり前の自己主張の範疇なのだが、普段の動きを見ている限りではピンと来ない。ただ、頼もしさというか、安心感は芽生える。ちゃんと大人になるもんだと、いい歳して実家暮らしの頼りない兄貴のくせに思う。目に見えない部分で人は、自分の想像より強く逞しいものなのだと思い知る。

 妹のことで思い出すのは、母親の自転車の後部先に座っている時に自転車が転倒して骨ご折れた時の話だ。腕の骨が折れたら相当痛そうだが、我慢して泣かなかったそうだ。何故そんな我慢をしたのか分からないが、そういう部分に意固地さを感じる。あまり会わないが、その時のことは聞きたい。

 今は2人の子供を産み育てている母親で、独身の僕には敵わない貫禄があっても良さそうなものだ。でも、相変わらず家ではフニャフニャしているし、明確な性格もよくわからない。でもそれは芯が硬いから、家族の前では柔らかくしていようという意思なのかもしれない。そう思うと底知れない。

タイレストラン入り口のオブジェ。東南アジアは笑顔の向こうに強さを感じる。