無邪気が街を駆け抜ける

 先日、自転車で駅に向かう途中、横から飛び出してきた自転車の子供とぶつかった。交差点に入る前にミラーで確認したのだが、まったく見えない角度から飛び出してきたので、瞬間的に何が起きたのか分からなかった。唖然としながら尻餅をつき、受身を取れない状態で臀部を強かに打ち付けた。

 子供の方はサッと立ち上がり、急いでその場を走り去ろうとしていた。でも、僕の足が彼の自転車に絡まって動けず、僕が解けるのを待って自転車に乗ろうとした。短パンなので怪我してないかと聞いてみた。とにかく早く帰りたいみたいで「大丈夫です」と答えて自転車に乗って行ってしまった。

 その場に取り残されたカタチの僕は、尻の痛みに尋常じゃないものを感じていた。駅に向かうために自転車に乗ると、痛すぎてサドルに座れない。尾てい骨でも折れてるのか、その恐怖がよぎった。暑い中を立ち漕ぎで駅まで走ったら大粒の汗が顔から吹き出してきた。もう出かけるのは無理だな。

 飲みに行くか。自転車を駐輪場に置き、痛む尻を押さえつつ酒場に顔を出した。とにかく早く尻の確認をしたい。トイレを借りて触診アンド目視で確認するが、医師ではない僕が何をしたところで分かることはない。でも、自分の体のことだ。感覚で分かる。たぶん打撲だ。骨には異常ないだろう。

 ひと安心しつつ、まずはビールを頼む。席に着くと尻が痛いので、ベストポジションを探すためにしばらくモジモジする。最初のうちは無理かと思ったが、飲み進めていたら落ち着いてきた。店主にことの顛末を話し、笑われることでひと段落着いた。尻の痛みをこらえつつ、楽しい夜を過ごした。

 ところが翌日、尻だけじゃなくて首が痛い。受け身を取らずに尻餅をついた反動で、首にもガクンと力が加わったのだろう。事故に遭った人がよく言うムチ打ち症的なものか。コルセットを付けるほどの痛みではないが、気になる違和感ではある。暑い時期のケガは憂うつだ。早く治りますように。

街角で空を見上げると、いつもごちゃごちゃの電線。いま上を見ると首が痛い。