VS.すべての低い天井

 僕の身長は188センチで、同世代の中では比較的高い方だ。小さい頃から周りの子より大きかった。それで得したことも多々あったと思われるが、良いことより悪いことの方が記憶に残りやすい。それは、よく頭を痛打すること。電車の入口では何度も頭皮を削られた。そして猛烈に恥ずかしい。

 以前も記したかもしれないが、フランスの葡萄畑で変死していた人のことを思い出す。葡萄の木に長年、頭部を痛打し続けたことが死因だったそうだ。僕もいつか電車の入口で変死するのかもしれない。その時は「太陽にほえろ」のラガー刑事みたいに、ドアが開いて閉まってを繰り返すのだろう。

 頭をぶつけた時は、いつも痛みよりも恥ずかしさや怒りが先にくる。恥ずかしいのは、電車などの大衆の目があるからだ。こちらは痛いのに、彼らは愚人を見るような目で見ているような気がする。そう感じると怒りも湧いてくる。その感情の起伏のおかげで、実際はかなり痛いことを忘れられる。

 でも、これが家でひとりの時だと怒りのぶつけどころがない。とにかく痛いだけだ。人前ではポーズで当たった場所をさするが、家では本気で患部を心配して触る。頭の形はきれいな丸じゃなく、表面は結構デコボコしている。そのデコボコが不安を誘う。頭蓋骨が割れてないかと心配で仕方ない。

 先ほど我が家で頭を強か打った。強かと書いて「したたか」と読むことは、最初に入った会社の営業先の担当者に聞いた雑学だ。その時にウケを狙い「九州弁なら『つよか』ですね」と答えたがスルーされた。あれは、我々の関係性が温まってないせいか、はたまたシンプルにつまらなかったのか。

 頭を打ったショックで、そんな過去の思い出が走馬灯した。本当に痛かったので頭蓋チェックをしたら、やはりボコボコだ。心なしか首も痛い。足下は先週からの痛風の余韻でジンジンしているし、首から上はボコボコでリアル満身創痍だ。でも、これらはすべて気のせいだと思い込むことにする!

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地下街というのはどこも天井が低く圧迫感があるが、酒飲みの胸を熱くする。