Running with shout at the devil

 大学の部活は、学生の自主性に任せた自由があるものだと聞く。でも僕が入学した当初は、旧時代のスパルタが横行していた。それは先輩の厳しさではなく、鬼コーチが支配する閉鎖空間だった。みんな高校時代は厳しいチームで鍛えられているので、僕以外は高校の延長で慣れたものらしかった。

 とにかく気が抜けないので、練習が終わるとヘトヘトになる。でも、練習後も先輩への配慮が甘いと怒られるので、実はそっちの方もキツかった。グランドでコーチから厳しくされることは慣れるが、私生活を含めた先輩との接し方は慣れない。僕が根本的に上下関係を忌み嫌っているからだろう。

 そんな大学の部活ライフで印象的なのは、とにかくグランドに入る時に叫びながらダッシュすることだ。練習のド頭から最高潮のテンションに持っていくというのが、恐らくあの意味なんだと今は解釈している。それは試合を想定した鍛錬で、相手の先手を取るためには入りのテンションは重要だ。

 当時も、表層ではバカバカしいと思っていたが、深層では理解できる部分もあった。ただ、それは想像するだけなので、そのように理解してやっていたらどうだったのだろう。そのコーチが言うのは「常に大刀を向けられた緊張感の中で練習しろ」的な、昔の柔道家の名言を実践する部分があった。

 総じて非科学的であったり、暴力で支配するような旧時代の遺物のようなコーチだったが、みんな強くて逞しいので、それを面白がる精神で軽く乗り切っていた。僕は這々の態でついていくだけの毎日だったが、そんな周りの強さに引っ張られて、なんとか生きていた。そんな日々が1年間続いた。

 入学当初は「こんな練習を4年間続けたらどうなっちゃうんだろう」と思っていた。でも先輩たちは、そんな練習に付き合う気は毛頭なかったのだ。学生の自主性に任せた部活という、大学の部活のスタンダードを取り戻した。高校の練習が厳しくなかった僕には、ちょうど良い修行期間になった。

これは京都の風景だが、どこかラグビー合宿の聖地・長野の菅平を思い出す。