熱さが足りない汎用巨人
学生時代は部活しかなかった。ラグビーをやるためだけに、高校から大学にかけてを過ごした。実際は高校の途中からラグビーを始めたので、学生時代のラグビー歴は６年くらいだ。それだけハマった理由は、自分の思い通りにいかないからだ。団体競技とは言え、団体の一員になれていないのだ。
最初は向いていないと思った。中学生の頃に観たドラマの影響で、高校では絶対ラグビーをやろうと決めていた。それなのに最初は陸上部に入ってしまう。幼なじみの先輩に誘われて断れなかったからだが、それ以外にもラグビー部に入らなかった理由がある。見学の時に痛そうだと思ったからだ。
つまり逃げたのだ。初めて見るラグビーの練習は楽しそうじゃなかったし、知った顔の先輩が顔から血を流しながら走っている様は異様に見えた。この世界は「人を選ぶ」と思った。そして、高校入学当初の僕はラグビーに選ばれなかったのだ。そんな気がする。だから陸上部の誘いを受けたのだ。
それでも、どこかで「逃げた」感覚が残っていたので、１年生の終わり頃に陸上部からラグビー部に転部した。周りの同級生から遅れて始めたので、経験としてはひとつ下の学年の連中と変わらない。それでも大きかったので、すぐにレギュラーとして試合に出させてもらった。何もできないのに。
この「何もできない」という感覚は、大学生まで引きずる劣等感だ。とにかく高校の段階では、ラグビーを自分の「できること」として勘定できなかった。その部員ではあるが、パーツとして役に立っていない。それが、徐々にひとつひとつのプレーをモノにして、小さな自信を獲得していくのだ。
大学に入って、周りの連中の自信満々な態度に呆然とさせられた。誰ひとり練習がキツいとは思ったない世界で、僕だけが地獄を味わっているのだ。そこで揉まれて、やっと基礎が固まったかもしれない。試合も楽しくなってきた。ただ、劣等感が邪魔をして熱くなれないのだ。僕の最大の弱点だ。
