使い走りは俺の天職

 大学時代は部活に明け暮れる日々だったが、そんな日々でも日常の小さな楽しみがいくつもあった。まあ、そもそも部活自体も学年が上がるにつれて楽しくなる。ただ、1年生の頃は厳しさにくじけそうになることもあった。そんな中では、練習以外の時間で楽しみを探して心の平衡を保っていた。

 部活以外の時間でも、1年生は常に部室の前に張って先輩に呼ばれたら即対応しなければいけない。基本的に上級生の方が授業は少なく、1年生はたくさん単位を取らなければいけない。だから、1年生の中で持ち回りで張り番をすることになる。イヤな役回りだが、誰かがやらなければいけない。

 僕は、その当番で部室前にいることが多かった。授業が比較的抜け出しやすかったのと、実習がない学科なので他の連中よりも拘束時間が短いのだ。だから、部室の中から先輩に呼ばれて中に入ると「またお前か」と言われたり、そのうち「イジメられてんのか?」などと心配されたこともあった。

 正直言うと、僕はその当番が嫌いではなかった。先輩たちが僕らを呼ぶときはおつかい(別名、使い走り)を頼むのだが、ほとんどの先輩が「お前もなんか食べていいよ」と言ってくれる。はじめのうちは遠慮していたが、どうやらそういう場面では「おす、いただきます」と言うのが正解らしい。

 ほとんどの使い走りは、部室棟の1階にある生協で弁当を買う業務だ。その弁当の中で肉丼というメニューがイチバン安い食べ物だった。上級生はすこし高いすき焼き丼を頼むことが多く、そこに卵をトッピングするとか紅生姜鬼盛りとか、アレンジを指示される。それは覚えきれるものではない。

 そんな使い走りの内容で、何度か部費の記帳を頼まれたことがあった。会計の先輩から通帳を預かったときは、いつもと違うミッションにちょっと緊張した。部費は、学校から支給される年間予算と保護者会から取り立てる月謝があった。チラッと見たら緊張感が倍増するような額が記されていた。

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民度の低い町の川沿いには、それを象徴するようなゴミ。もちろん発泡酒だ。