パーティ・クラッシャー

 昨年末に大学のOB会に期せずして参加した時に、急に終わりの挨拶をふられた。久しぶりに顔を出したので「なんか言えよ」的な軽いフリだったのだろう。でも、学生時代の僕は宴会でウケを狙うタイプだった。こういう場面に来ると、当時の自分がフラッシュバックする。それは呪いでもある。

 スポーツ推薦的な大学生活だったので、部活の中で生きていくしかなかった。特に高校時代に下積みがあったわけでもなく、また弱小クラブだったので目立った成績も上げてない。そんなスペックで部活ライフをサバイブするためには何かしら生存戦略が必要で、それが僕にとっては宴会芸だった。

 特に芸達者ではなかったのだが、子供の頃から通信簿に「ひょうきん者」と記される程度には明るく快活な子供だったと思う。その頃の記憶を引っ張り出して、ひょうきん者を憑依させた謎の宴会芸を披露していた。最上級生はスベり芸的に笑ってくれたが、同期たちからは冷笑されていたようだ。

 そんな記憶が、この大学OBの宴会という場に来ると蘇る。そして、当時の気分に戻ってしまう。誰も頼んでいないのに、ちょっとしたオモシロを出そうとする。我から積極的にスベりに行ってしまうのだ。それはサービス精神から来ていると思う。誰も待ってないサービスだとわかっているのに。

 そして、僕は歌っていた。大学名物のなんちゃら踊りのメロディを口ずさんでいた。その様子はとても痛々しいのだが、どこか冷静に見ている自分がいる。日常的に暴力をふるわれている子供が多重人格化する現象のように、スベっている最中の僕は意識をシャットダウンしているのかもしれない。

 あの日のことを思い出しても、まあ正解の挨拶は考えられるけれど、あの立場になったら再び宴会芸ロボに擬態してしまう気がする。特に味方が少ない場だと、その呪いが発動しそうである。いっそ宴会芸の精度を上げた方がマシかもしれない。そういう意味で振り返っても、あの日は最低だった。

人前でスベるとメンタルにくるので、濃い濃いラーメンで平常心を取り戻せ。