車窓に映るは昨日の自分

 大学で体育会系の世界に迷い込んでしまった僕だが、高校まではごく普通の生徒だった。部活には所属していたが、大学の運動部のようなゴリゴリ感のない、いわゆるスポーツマンの側にそっと置かれているような人間だったと思う。そこで切磋琢磨し、上を目指すような雰囲気はまるでなかった。

 そんな性格を持って大学の部活に身を投じると、コッチはほぼヤンキーの縦社会ノリなのだ。そして、誰ひとりとしてその世界観を疑わないし、その上で個人の性格が成り立っているように見えた。当初はその立ち位置の違いに怯んだ。ヤンキーでもスポーツエリートでもない僕は、途方に暮れた。

 ほぼ強制的に寮生活に入るのだが、高校卒業を待たず、考える間も無く新生活が始まった。慣れない人間関係と劣等感の日々に初手から参ってしまったが、今さらギブアップはできない。毎日、脳みそを空っぽにしてひたすら気持ちが折れないように走っていた。その段階では、まだ高校生だった。

 3月末に高校の卒業式のために一時帰宅が許された。と言っても、前の日に家に帰って、翌日は卒業式の後すぐ寮に戻るだけだ。高校の友達に会えるのが楽しみな反面、すでに踏み出してしまった異世界の憂鬱を抱え込んだままでもある。周りの連中と明らかにノリが違う。僕は異物になっていた。

 僕が寮で新しい刺激を受けている間、高校の同級生たちは卒業旅行に行っていたらしい。彼らの人間関係もステップアップしており、それは僕の進んだ方向とは全く別の浮ついた世界に見えた。その時に僕は、この高校での自分は終わった、と一時的に思った。過去を断ち切り未来へ向かう姿勢だ。

 その時まで、僕にとって高校は退路だと思っていたのだろう。それが自動的に絶たれたので、今いる世界で頑張る決意のようなものが芽生えた。卒業式の後は、ダラダラ残っている同級生を尻目にサッサと帰ってきた。家から寮に向かう電車の中で少し泣いた。寮に戻ったら完全に吹っ切れていた。

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BBQを浮ついたグループ交際の象徴として忌み嫌う友達の呪いを解きたい。