なぜかモーターサイコー

 僕はバイクに乗ったことがない。後部座席に乗ったことはあるが、公道を自分で運転したことがない。普通免許に付属されている原付ですら教習所でしか運転したことがない。バイクに対する憧れというか、理想像のようなものはある。小さめのオフロードバイクを乗りこなしたい気分が軽くある。

 そもそも思春期にバイクに憧れなかったことが大きい。近所のガキ大将がバイク事故で亡くなったので、あまりそこに惹かれなかった。当時はヘルメットがマストじゃなかったので、転倒すると高確率で命に関わる。そのことが壁になっていたのか、長い間バイクへの関心が向かずに過ごしていた。

 実際に今でもバイクに乗りたい衝動のようなものはない。ただ、避ける気持ちもない。実際的な問題として原付しか乗れないので、あのサイズのバイクに乗りたいとは思わない。乗るならある程度の大きさがないと、背の高い人間には似合わないだろう。だから乗るならいわゆる中免が必要となる。

 時間的にも経済的にも余裕がないので、免許を取ろうとは思わない。だからバイクにも乗らない。バイクのない人生で終わるかもしれないが、そんなに後悔はしない。そう思っていたけれど、昨夜、夢の中でバイクに乗っていた。運転に不慣れな僕を仲間が先導してくれた。妙にリアルな夢だった。

 夢の中で、先を行く友達が荷物を落として、それを避けた対向車が事故を起こした。対向車がトラックで、運んでいた荷物に傷がついたとのことで高額請求されていた。なんとなく、僕のために先導してくれたことへの責任を感じていた。友達は憔悴しきっている。僕は励ます言葉も見つからない。

 そこで目を覚ました。友達が誰だったのか覚えてないが、事故の後処理の煩雑さと落ち着かなさだけが残っていた。やはり、バイクに乗るのはやめよう。そういえば、ただ一度だけ公道で運転したことがあった。南インドの街で、旅先で出会った女の子を追いかけていた。あれも夢のような光景だ。

あの子を追いかけて、小型バイクで駆け抜けた南インドのとある町の夕暮れ。