ハイプレッシャーライフ

 以前の職場の同僚で、今でも月に一度は顔を合わせる人間がいる。僕は外部スタッフとして関わっているだけなのだが、彼はその事務所の専任スタッフである。いつも事務所に泊まり込んでいるので、外見が酷いことになっている。その事務所はガスを引いてないので、風呂にも入れないのである。

 近くに銭湯があると言っていたから、体臭が限界を超えたら銭湯でリフレッシュするのだろう。でも、風呂上がりでポカポカしちゃうと眠気が襲ってくる。締め切りに追われて泊まり込んでるのに寝落ちしていたら、何のための無理だか分かったもんじゃない。そもそもが無理ゲーではあるのだが。

 長年同じ仕事をしているのだが、毎回締め切り間際には忙殺されている。当初は彼の忙しさのおかげでその仕事が完遂されていると思っていた。外部から見ると、その職場でひとりだけボロボロになっている。だから、中にいない人にはそう見える。でも実際は仕事の割り振りが下手なだけなのだ。

 その事務所の社長は彼とは長い付き合いだ。ある時期はとても仲良く見えた。でも、最近では明確な主従関係が築かれている。社長からの電話に怯え、話す声が震え、普通の会話でも言葉がスムーズに出ない。そうやって慌てるから余計に不信感を買い、結局は普通の会話が大説教に変わっている。

 昨日もその事務所の仕事があったので、そこで彼の姿を見かけた。相変わらず泊まり込み何日目かという感じで、虚な目をしていた。そのうえ、何かやらかしたらしく、社長がどこかにお詫びに行くところだった。同じ職場にいた頃も周りの仕事を増やすタイプだったので、その資質は健在らしい。

 そんなやらかし体質を見越して仕事を振らないから、社長も自分が動かなきゃ収まらないことになる。この件でまた借しを作ってしまったので、彼の無理ゲーは続く。もはや信用を勝ち取るのは至難だが、そこ以外で生きて行けるとも思えない。せいぜい体は大事にして欲しいものだが、体も弱い。

ストレスの強い職場で働くなら、大好きなラーメンで自分を甘やかすしかない。