いつまでも拙いテレパス

 いま当たり前のように誰でもスマホを持っているが、僕が携帯電話を手にしたのは社会人になって3年目のことだった。まだ電話の機能しかない頃で、各社が拡販キャンペーンを展開して、機種代無料で登録者数を増やしていた。仕事の呼び出しが増えそうで嫌だったが、時勢に押されて購入した。

 そういう軽薄なキャンペーンで軽率に手に入れたので、その会社には何ら思い入れはない。しかも会社名が頻繁に変わるので、同じキャリアを使い続けていると言う感覚も薄い。社名変更で何度もキャリアメールのドメインを変えさせられた。迷惑な話なのだが、それでも変えずに使い続けてきた。

 別にこだわりがあるわけではなく、まあ強いて言うなら当初は安かったから使っていた。その頃の知り合いに同じキャリアのユーザーが多かったので、それらとの通話が安いという利点もあったと思う。その利点も徐々に薄まって来たのだが、初期のアイフォーンが同社の専売だったので継続した。

 その後は、各社でアイフォーンを使えるようになり、完全に利点はなくなった。格安のキャリアも普及して、よもや使う理由がなくなったと見て解約に踏み切った。だが、いろんなアプリやサービスが同社のキャリアメールに紐付けられていたので、その変更やらの作業で昨年末後半を忙殺された。

 そうやって準備万端整えて、新しいキャリアの店頭予約を済ませて手続きに向かった。本当は端末も変えたかったのだが、年末年始の繁忙期で在庫が薄く、僕の好みの機種は入荷が読めない状態だった。いま考えると、その入荷を待って手続きすれば良かったのだが、なんとなく急ぎたかったのだ。

 この辺に僕のせっかちというか、仕事急ぎ症が出る。手をつけてしまった業務は、締め切りに余裕があっても仕上げてしまう。たぶん相手にとってはケツを合わせてくれた方が良い場合もあると思うのだが、僕が止まらない。止めたら動かない。そのせいで、前キャリアの締め日までのロスが出た。

忍者が潜んでそうな路地裏。電話がない時代はテレパシー程度は使えただろう。