高圧ボーイは匿名希望

 僕の携帯には頻繁に見知らぬ番号から電話が掛かってくる。出なければ良いのだが、魔が刺して出てしまうと、果たしてそれはセールス電話に決まっている。携帯と連動してワイファイのサービスを安く利用しませんかと勧誘してくる。何度も断っているが、何度も同じような内容で電話してくる。

 いい加減その電話には出なくて良いやと思っているが、それは最後に受けた時の気分が最悪だったからだ。いや、いつも最悪の気分にさせられるのは変わらないが、記憶が新鮮なので思い返すと苛立ちがリピートしてくる。とにかく高圧的というか、僕のことを「バカな情弱」扱いして話してくる。

 おそらくそれは、マニュアル通りのセールス話法なのだろう。相手を下に見て、有利に話を進める作戦なのだ。このやり口は、悪質な訪問販売の連中も使ってくる。勝手に人の家に来ておいて、ヤツらの都合だけでペースを掴もうとしてくる。自分のペースで話すことで主導権を握るという寸法だ。

 この手法を喰らうたびに「我が家の両親は引っかからないかな」と大いに心配になる。手の内を知っている僕ですら断りづらい雰囲気を作られそうになるのに、果たして両親はかわせるのか。その心配は尽きないが、とは言え全てのセールスを僕が撃退するわけにもいかない。必勝法がほしいのだ。

 そんなヒントが、あえてセールス電話に出ることで得られないか、そんなことを考えてしまう。たぶん何も得られないだろう。むしろ苛立ちが増加するばかりだ。腹が立つのは、そのセールス電話が僕のキャリアの名前を騙って、僕の名前を確認してから話し始めることだ。卑怯なやり方だと思う。

 ヤツらの「お前の名前を知ってるぞ」という薄い脅迫が最初に入るのだ。リストで電話してくるのだろうが、そのリストが実名入りで出回っていることに問題がある。セールス電話の連中は、どう贔屓目に見ても悪質業者だ。そのことを考えてイライラする。もう、スマホなんて捨てちまおうかな。

酒場でセールス電話に出てしまい、不機嫌なまま食べた辛ラーメンは旨かった。