難攻不落の城を攻めろ

 何度やっても慣れない日常の雑事の中でも、スマホのデータ移行や初期設定ほど時間のかかるものはない。仕事でパソコンを使うことが多いので「慣れている」と勘違いされることが多いが、僕は限られたソフトしか操作できない。しかも、そのソフトの一部の機能しか使わない限定的な使用法だ。

 いま自分が使っているアイフォーンも、すでに販売店から何度か「そろそろ買い替えをご検討ください」的な電話がかかってくる程度には使っている。先方は親切で言っているわけじゃないので、その都度雑に扱っているが、これほど僕の個人情報を握っている人間はいないので優しくするべきだ。

 飲食店の店員に威張り腐るヤツは最低人間と決まっているが、電話のセールスに対しては毅然とした態度で応じたほうが正しいと思っている。スマホの買い替えを電話でサクッと済まさせようとするからには、先方にも武器はある。キャンペーンというヤツだ。それに乗ると得だという誘い文句だ。

 このように、セールスは今だけの特別サービスが「ある」という点だけを強調してくる。でも、急な電話ではこちらに判断材料はない。何に比べて得なのかは電話先の人間の話でしか知らない。そういう理屈を瞬時に考えて、こんな一方的なセールスに乗るほど甘くねぇぞ、と激昂してしまうのだ。

 もちろん理性が勝るので電話口に怒鳴るようなことはしない。先のように個人情報を握られているという弱みもある。だから、静かに「いま忙しいから」と会話の途中で切るのが関の山だ。このご時世だから、店頭より電話でのセールスが主流になっているだろう。だから、買い替えは気が滅入る。

 我が家の両親が長いこと、いま使っている携帯が「使えなくなります」という案内を受けていた。いい加減そろそろ買い換えようと思い、問い合わせの電話をかけたら、数日後に最新のスマホが送られてきた。僕に課された役割は、そのデータ移行と初期設定という、もっとも苦手な分野の作業だ。

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和室と中庭は落ち着く。こういう部屋でならデータ移行でイラつかないかも。