すべては消え去るもの

 年末に体調を崩して、病院に行ったら時代遅れのウイルスに感染していた。新型のアレだ。家族と同居の身なので、家庭内感染を防ぐべくホテル療養を希望した。ネットでの申し込みなのだが、添付資料に不備があり返信が滞った挙句、父親に感染させた。それでもホテルへの自主隔離は行なった。

 ビジネスホテルで誰にも会わずに隔離されているわけだが、この間の費用はかからない。家では完全な隔離は不可能なので、ホテル生活なら楽に隔離が実現できる。弁当の受け渡しのタイミングで他の部屋の住人に会うが、みんな等しく感染者なので気にしなくていいのだろう。詳しくは知らんが。

 結果的には3日間のホテル生活となったのだが、その期間中にサッカーのワールドカップの決勝などがあり、それをTVで観戦するなどして時間は過ぎていった。あまり不便は感じず、寂しくもなく、気落ちすることもなく過ごせた。スポーツに勇気をもらうと聞くが、確かに救われた部分はある。

 詳細な感染経路は不明だが、症状が出る前に母校のラグビー部の入れ替え戦を見に行った。下のリーグから上に上がるチャンスである。ずっと入れ替え戦までは行くのだが、なかなか上がれずに下のリーグでもがいている。そんなチームのことがちょっと気になり、同級生に声をかけて見に行った。

 その試合の結果は母校が負けたのだが、大差というより地力の差で相手に逃げられたという印象の試合だった。同じ相手と翌年も当たるのならば、勝つ見込みはあるだろう。そんな風に先輩ヅラして分析しながら見ていたら、試合途中で震えるような悪寒を感じた。完全に風邪をひいた時の感触だ。

 そんな感じで年末の大部分を感染症の後始末で終えてしまった。繁忙期のはずだが、仕事があまり入らなかったのでノンビリ過ごした。なんかもう、日常の世界から降りた人間のような気分になってしまった。仕事から引退できるような余裕はないのだが、隔離を機に半分消えたような感覚がある。

あの地獄のような天国を共に過ごした隔離部屋。PC持ち込み可でWi-Fiも完備。