熱狂の予行演習

 昨夜の深夜というか今日の早朝というか、とにかく真夜中に多くの日本人が起きて同じ映像を観ていたことだろう。サッカーワールドカップ決勝トーナメント、日本代表対クロアチアの試合だ。僕のようなにわかは、この辺りでやっと盛り上がりに追いつく。でも、その追い上げも虚しく、敗れた。

 延長の末のPKなので、まさに死闘である。そこまでもつれると、もう運としか言いようがないのかもしれない。日本代表はここで勝つことを目標にしてきたが、そこを目標にしていると越えられないということがある。実現可能な目標をいかに高く設定できるかが、戦うための準備だと思うのだ。

 これは僕が実戦で身につけた感覚だ。僕はラグビーしかやったことがないので、その感覚を得たのはラグビーの練習でのことだ。コンタクトスポーツなので、相手の選手とぶつかる場面がある。いわゆる「当たり」というヤツだ。この当たりが強ければ、相手との接点で有利にボールを展開できる。

 高校の頃、僕は当たりが弱かった。それは筋力が足りていないと思っていたが、大学に入って先輩にコツを聞くと「当たりの接点が違う。もっと先に走り抜ける感覚で当たれ」と言われた。つまり、僕は接点で止まっていたのだ。当てて止める感覚だ。それだと、押してくる相手と力が相殺される。

 力感のある当たりで、なおかつボールを綺麗に出せるポイントを作るのなら、相手との接点から2歩先くらいを目安にすると良い。しっかり相手に圧力をかけた上で、有利なモール・ラックを形成できる。このことを教わって以来、僕にその「目標の先の先を見る」という感覚が備わった気がする。

 今回のサッカーワールドカップは、来年のラグビーワールドカップの前哨戦として考えを切り替えることにする。その前にWBCがある。これから世界で戦うスポーツ選手の活躍を観る機会は多い。それにサッカーもまだ終わっていない。ここからは、にわかファン度を深める勉強としての観戦だ。

合宿で朝から走らされたような田舎の森の道。真っ赤なポルシェがよく似合う。