秋というには寒すぎる

 食欲の秋とかスポーツの秋とか、季節に紐づけて何かを始めるキッカケとして秋はちょうど良いのだろう。それは暑さを通り過ぎて、体を動かすのに適した気温だからだと思う。そんな秋が、年々短くなる。今年の秋も短かった。すでに終わったかのように記しているが、実感としては冬の寒さだ。

 健康に気を遣わなければいけない身の上だもんで、食欲に関しては控えている。とは言えスポーツの方は残念ながら停滞気味で、健康診断で医師から運動をすすめられる程度には悪い数値を叩きだしている。ジョギングを再開させたい気持ちはあるのだが、寒すぎるので朝から走り出せないでいる。

 家に篭りがちな日々で、気晴らしになるのは読書だ。すでに冬だと感じてはいるが、読書の秋は継続中である。すこし前に古本屋で仕入れた格安本が、意外と掘り出し物だった。初見の作家も多く、新鮮で読み応えがあった。いつもはミステリ作品が多いのだが、今回は恋愛小説が多かったりする。

 本を読んでいる時は、頭の中が作家の文体になってしまう。特徴のある文体だと、つい口にしたくなる。なるべく影響されないよう、そういう作家の本を読む時は、別の作品と併用している。今回の本では町田康がそれだ。独特のおかしみがある文章を読んでいると、そのスタイルで話したくなる。

 町田康の本は何冊か読んでいる。念のために断っておくと、今回選んだのは恋愛小説ではないと思う。まだ読了していないので、本当のところは分からない。でも、たぶん歴史物のはずだから恋愛要素は薄めだろう。歴史物と言っても町田康の世界は独特なので、作家名がすなわちジャンルなのだ。

 そんな独特の世界が楽しめるかどうか、それは体調による。いまの体調は町田康とフィットしているような気がする。元気ハツラツという感じではないけれど、健康に大きな不安はない程度のフラットな状態。この普通を揺さぶってくるのが町田康なので、中くらいの心持ちで読み進めていきたい。

かなり前に北陸旅行で行った名もなき海辺の小屋と崖を下から撮った変な写真。