外食は宝探し

 飲食店で食べる食事は至福の時にしたい。極端に落ち込んでいる時には外食する気にもならないので、それなりにマインドセットして食べに行く。行き慣れてくると、そこに行くこと自体がある種のマインドセットになる。そこの食事が保証してくれるハッピーを知っているので、安心できるのだ。

 ラーメン屋はハズすことが少ないが、それでも念のために事前にグルメサイトで検索はしておく。それは、その店独自のルールがないかとか、仮にあっても、その煩わしさを差っ引いても食べたいと思うかという確認のためだ。あまり通りすがりにサラッと入ることはない。確実に下調べしている。

 そんな姑息なことはせず、気の向くままに入れば良いと言う人もいる。そういう人はチェーン店を利用することが多いように思う。僕は個人経営の店が好きだが、チェーン店の中にも好きな店はある。でも、外出先の食事ではチェーン店を除外している。そこは新しい店を知りたい欲求が勝つのだ。

 事前に調べて行ったとしても、最初の入店はドキドキする。まず最初に気になるのは、店員さんの態度だ。地方の食堂などで昼過ぎにオフピーク入店すると、疲弊し切った老店主がカウンターに項垂れていたりする。混雑を避けがちな僕は、そんな場面によく遭遇する。そして、残念な気分になる。

 世界が密だった数年前、平日の午後にふらりと東京の東側の下町に出かけてみた。せんべろで有名なエリアだったけれど、その手の店に入る気分じゃなかったので珍しく検索なしで選んだ店に入った。町中華というヤツだ。チャーシューでもアテに瓶ビールを飲ろうと、適当な店に足を踏み入れた。

 その店は奥に長く、暗いなぁと思っていたら電気が消えていた。昼休憩の時間だったのかもしれないが、カウンターで居眠りこいていた店主が起きて電気を点けてしまった。良くない入りをしてしまったが、起こしたからには食べなければいけない。互いに最悪の気分で飲むビールの味は苦かった。

繁華街の看板は旅人を宝のありかへと導く道標。中にはハズレもあったりする。