凡人たちの奇人変人大会

 僕の応援するプロ野球チームは、今年に入って日曜日に一度も勝てなかった。それが昨日、初めての日曜勝利ということで、普段は外で飲まない曜日なのだが、ひとり祝杯をあげようと思って酒場に向かった。その酒場の店主の奥さんも同じチームのファンなので、そんな親近感もあったのだろう。

 まだ明るい宵の口から飲み始めたのだが、その店ではむかしから全然仲良くなれない常連さんがいる。共通の知り合いが多すぎて無視できない存在なのだが、僕が挨拶しても無視されるので、過去に僕が何か無意識に嫌なことを言ったのだろう。その人は必ず来るので、来たら帰ろうと思っていた。

 予感は当たるもので、しかも予想よりも早く来たので飲み足りなかったので、しばらくはカウンターに並ぶことになった。その人は店主と仲良しなので、僕は話し相手もなく手持ち無沙汰で杯を重ねることになる。その時間が勿体無いので帰れば良いのだが、酒の力が加わって意固地になってくる。

 先に帰った方が負け。そんな意識が頭の片隅に芽生え、酒場のチキンレースを人知れず開催していた。でも、これを始めた時点で勝てないことは決定している。その人はほぼ毎日、閉店までいるからだ。昨日も閉店まで付き合ってしまった。当然のことながら、その間その人とはひと言も話さない。

 ただ、その人は人望が厚いらしく、必ずその人の周りに取り巻きができる。僕は徐々にカウンターの席をズラされ、その人との距離は目に見えて離れる。そのタイミングで、僕の隣にいた女性が話しかけてきた。その人は初めて会う人だったが、それも当然で、昨日がはじめての来店なのだそうだ。

 東北の出身で、その店の近くに住んでいるそうだ。なんとなく新しい仲間ができたような気分になり、周りにいた顔見知りたちに紹介しまくった。先の常連さんの取り巻きたちは全員僕とも面識があるので、彼らに紹介して来やすい店になれば良いと思った。そんなわけで意外と楽しい夜になった。

いつの間にか、酒場ではサラダくらいしか食べないカラダになってしまった。