声のマジック、小さな奇跡
以前、酒場の仲間が弾き語りライブに出演したことを記した(3月20日『サタデーナイトの奇跡』より)。その彼が、再び同じステージに立った。前回は、無欲な中年男がステージで起こす奇跡を期待して過剰に盛り上がっていたのだが、今回はハードル低めだ。とにかく無事乗り切って欲しい。
そんな親心に近い心境で観ていたのだが、果たして今回は小さな奇跡が起こったような気がする。前回は何曲も試しては、本人の声とハマらずに盛り上げきれない感じがあった。でも、今回は「見つけたな」という確かな手応えがあったのだ。そして、観ている僕らは最初っからそれを知っていた。
今回も弾き語りイベントということで、周りは経験豊かなセミプロのような人ばかりだ。その中では完全な素人である僕らの代表。まあ、別に僕らを代表して出場しているわけではないのだが、僕がそんな気持ちで観ていたというだけのことだ。そんなクセモノの中で、ひときわ輝くものを見せた。
演奏技術は前と変わらないのだが、とにかく歌が良い。それは、長い付き合いの中でカラオケに行ったこともあるので、「この人結構歌えるんだよな」ということは知っていた。それにしても、ステージで出す声の強さと気持ちよさが他の人から頭ひとつ抜けていた。そこを上手くアピールできた。
昨夜のステージで、当初は3曲で終わる予定だった。でも、最初の演者からの流れでアンコールが入るようになり、その曲で気持ちの良い声を聴かせられたのだ。準備していた曲ではなく、その場で決めた「むかしから好きな曲」として、ジギーというバンドの古い曲を大きな声で歌い始めたのだ。
普段なら感動すると涙腺に直結してダラダラ落涙するところなのだが、昨夜の僕は目線が親なのでホッとする気持ちの方が大きかった。おかげで泣くことはなく、冷静な気持ちで「とても良かったですよ」と伝えることができた。相変わらず余計なことも言ってしまうのだが、ほぼ最高の夜だった。