心を蝕む病の後遺症

 僕は、小説やマンガ、TVドラマや映画などでイジメのシーンが出てくると、無性に腹が立ってしまう。とても単純な発想で、加害者側に対して苛立ってしまう。でも、昨今の作品群には多様性が付与されているので、イジメる側にも事情があることが多い。その多くは家庭での虐待だったりする。

 ここまで僕がイジメに過剰反応するのは、何に起因しているのだろうか。僕の学生時代は主に80年代だが、その頃から今に至るような陰湿なイジメは表出していた。それ以前は学校全体が荒れていたので、不良が理不尽に暴れることはあった。イジメよりもハードモードな暴力時代があったのだ。

 僕の学生時代をクロニクル的に表するとしたら、校内暴力の次にやってきた初期イジメ時代の到来と言えるかも知れない。学校が生徒の暴力に対応するために、過剰防衛的に締め付けが厳しくなったような気がする。まあ、当事者の僕は過去の事情を知らないので、後々そのように感じただけだが。

 そんな過剰防衛時代の学校は、生徒数も多いので教員の目が行き届かない。つまり、教室内に隙が生れる。その隙をついて、クラス全員で特定の生徒を追い詰めるようなイジメ行為が横行した。僕が直接被害を受けた覚えはないが、加害者側にいたことはあった。静かなマジョリティというヤツだ。

 僕の周囲で見られたイジメ行為は、どの時代にもあったような遊びの延長だったと思う。暴力行為はなく、クラス全体が個人を追い詰めるというような統率はとれていない。かばう人間もいたし、イジメられる側の人間もタフに歯向かっていた。ただ、そのとき心に負った傷の深さは計り知れない。

 僕は、自分が正しい側の人間だと思い込んでいるときがある。でも、僕はすこしも正しくないし、優しくもない。ハロー!シャイダーの歌詞に倣って「面白いことが大好きで、悪いことが許せない」と思い込まないといけない。そんな自分の暗黒面を刺激するから、イジメ描写に過剰反応するのだ。

心を浄化したいときには海岸に行くものだが、海岸のゴミに心が荒んでしまう。