毛髪レクイエム

 中年あるあるだが、いよいよ薄毛が深刻化してきた。短くしていると比較的わからないのだが、伸びてくるとボリュームのなさに愕然とする。パーマや脱色等で傷めることなく過ごしてきたが、経年劣化には勝てそうにない。特に頭髪に気を使う人生ではなかったが、もっと遊ぶべきだったと思う。

 坊主頭が似合うなら、丸刈りにしてしまえば問題ない。頭のカタチが悪いので、ハンパな長さに整えてしまう。人生で、自分に似合う髪型に出会えていないのだ。このまま毛根が死ぬのに任せていたら、それは見つからず仕舞いで終わる。まだ生えているうちに最後のあがきをしておきたいところ。

 最近の極端な刈り上げは、その髪型の人たちが揃ってガタイに自信のある色黒のギラギラした男たちばかりなので、そこには躊躇してしまう。でも、やるなら今しかねえ。そんな声が聞こえてくる。別に奇抜な髪型というわけでもない短髪刈り上げなので、誰にでも違和感なく似合うとは思われる。

 そこから徐々に上のボリュームを減らしていけば良いのだ。そうすれば、毛量の減少が自然なカタチで誤魔化せそうである。そこでハタと気がつく。僕は誤魔化したいのか。別に構わないではないか。誤魔化したいという気持ちを抱いていると、薄毛の進行に生活を左右されてしまうのではないか?

 毛髪の量や体型など、人が無意識下で縛られていることは多い。他者の目を意識する手前の段階で、自己評価しているようだ。その自己評価の目を厳しくすると、自己肯定感も比例して下がる。どうせ俺なんて、という卑屈な発想になってないか?「どうせ」は呪いの言葉なので使わない方が良い。

 ちょっと話が逸れて大袈裟になってしまったが、とにかく僕は似合う髪型がない。そして最近、経年劣化で髪のボリュームがなくなってきた。現時点で似合う髪型を探すのが最適解だろう。色黒マッチョ系短髪刈り上げにしようか、それともロン毛と呼ばれる長さまで伸ばすのも良いかもしれない。

鏡面の如き水たまりに映る青空。僕の頭皮も鏡面のような照りを見せつつある。