ポリティカルナイトグラマー

 酒場には禁忌がある。むかしから言われているのは「政治と野球と宗教の話はタブー」というものだ。野球ファンが集う酒場を根城にしているので、野球の話は避けては通れない。誰もがそれぞれの推し球団を、勝手に応援している。特定の球団に偏ってないので、自然に紳士協定が結ばれている。

 野球以外の方はあまり話題に上らない。政治の話なんて本当なら、酒場でこそ交わされるべき話題だと思う。知見が狭いので迂闊なことを言ってしまいそうだが、その点を指摘されてブラッシュアップしたいのだ。そんな気持ちを抱きつつ、それでも近年までは政治のことには触れずに生きてきた。

 それが、ここ数週間は漏れている。酒場の店主から注意される。政治の話をすると、それは不満の吐露になる。たぶん、そんなこと「ここで言ってどうする?」という気分が店主にあるので、単なるネガティブ発言は言わんでくれってことだろう。その気持ちはよくわかるが、止められそうにない。

 最近そんな発言が目立つのは、やはり野球が終わって話すことがなくなったからだろう。いつもならば音楽の話や読んだ本のことを話すのだが、最近いい音楽を仕入れられていない。サブスクで気軽に聴けるようになってから、新しいものも古き良きものも、ディグることが少なくなってしまった。

 ちなみに政治の話といっても、別に現政権の具体的な何かを指摘するワケじゃない。ただ、生活の不満を口にするときに「それは政治が悪いんだ」というふうに責任の所在を指摘してしまうのだ。間違いではないが、だからといって何も変えられない。そんなもどかしさが、みんなの不満の火種だ。

 言語化すると理解が深まる。やはり酒場での政治的発言は避けた方が良い。楽しくない。それこそ為政者の思惑通りという気もするが、こちとらの人生を豊かに楽しむことが最優先に決まっているので、むしろ政治などに足を引っ張られている場合じゃない。笑って楽しんで生きることが最重要だ。

何ら信仰心を持たない僕だが、朽ちた建造物への偏愛は信心に近いものがある。