酒場で飲む水プライスレス

 僕は尿酸値が高いことを酒場でカミングアウトしているので、お店の人々が痛風を心配して水をたくさん出してくれる。アルコールと同量の水を飲めば酔わないなんて都市伝説を聞いたことがある。真偽の程は知らないが、とにかく水とビールを同時に飲んでいる。そして、ちゃんと酔うのである。

 僕が酒場での記憶をキープオンできなくなって来たのは、ここ数年のことである。かつては酔い潰れることもなく、飲みの場で起こった出来事は割とクリアに覚えていた。でも、ひとりで飲むようになってからは覚えるべきこともないので、時系列もあやふやだし話したことも覚えていない有様だ。

 もっとも困る記憶問題は、初対面の人とのやり取りである。酔った状態での初対面は覚えていないことが多く、何度会っても「はじめまして」的なリアクションをしてしまう。店の人から「前に会ってますよ」と注意してくれれば良いのだが、それを言うことで余計気まずくなりそうな場合もある。

 そんな記憶の消失現象が頻発するようになったのは、水を増量してからのような気がする。なんとなく水で嵩増ししているせいで、飲む量も増えているのではないだろうか。健康に気を遣っているから多少の不健康は許される、そんな思考だ。飲む量がキャパオーバーしているので記憶が飛ぶのだ。

 そのことに思い至り、とは言え水を飲まないと尿酸値が心配(飲んでも尿酸値の心配は尽きないのだが)なので水は飲み続けている。その分ビール等のアルコール飲料を減らす、という発想はない。なんとなくシステムを理解していれば記憶は飛ばないような気がする。そんな気持ちで飲んでいる。

 昨日はちょっと飲みすぎてしまった。2軒目の居酒屋に入った段階で「酔ってますね」と店主に言われるくらい酔っていた。いくら飲んでも変わらなかったはずの僕が、人からひと目で酔っていると指摘されるようになった。これからは酔いを指摘されたら「終了」の合図と決めた。心の奥にメモ。

居酒屋の店主が最近ハマっているのがタコス。これが美味いので酒もすすむ。