もう会えないかもしれない

 行きつけの居酒屋を出禁になる夢を見た。不吉な夢だ。夢なので整合性は皆無だから、特に原因はない。でも、僕の中に出禁にされそうな覚えがあるか、出禁にして欲しいという願望があるのかもしれない。強制的に行かない場所ができると、ある意味で楽になる。その分、別の可能性を探せるし。

 とは言え、身に覚えのない出禁扱いはショックだ。その店を出禁になる夢は、初めてじゃないような気がする。その店の店主が、たまに誰かを出禁にした話を聞くから、その都度「オレも気をつけよう」なんて思ってしまう。店主の機嫌を客が気にする必要はないが、まだまだ通いたい店ではある。

 そして、最後にその居酒屋に行った時に、珍しくほとんど店主と話さなかった。注文のやり取りでボソボソ話したくらいで、それ以外は黙って飲んでいた。前の店で飲みすぎて疲れ果てていたので、そのボロ雑巾具合から触りたくないと思われていた可能性はある。非常にダウナーな酔い方だった。

 そんなダウナー状態でも、僕の意識はしっかり残っている。単純に仕事しながら飲んでいたので、頭がパンクしていたのだ。そのクーリングダウンとしてのハシゴ酒だったが、別のことで頭が占められてしまった。迷惑な客になりつつあるが、急には元気出ない。こんな時は静かに速やかに退散だ。

 その無様な帰り方が、なんとなく後悔というか、不甲斐ない感じで残っていた。ゴキゲンに飲めないのは自分の体調によることだが、その程度の機嫌を飼い慣らせない自分が悔しい。しばらく酒場をやめても良いかな。推しているプロ野球チームの敗退も決まったし、しばらくは仕事に集中しよう。

 そうやって酒場を断つと、久しぶりの時にありがたがられたり懐かしがられたりする。かなりの頻度で通っているので、ちょっと行かないだけで「どうかしましたか?」と心配される。心配されたくて行かない構ってちゃんのように思われるかもしれない。でも、実際にはシンプルに金欠でもある。

都内の陽気な飲み屋街。河岸を変えるという選択を考えてもいいかもしれない。