ヤングホラーデイズ

 僕は怖がりだった。いわゆるオバケ幽霊の類の話をされるとビビりまくっていた。油断して読んだホラー漫画がトラウマ級に恐怖を植え付けていたこともある。だが、それは過去形だ。そんな怖がりだった時代の思い出と、そこからの解脱についての顛末を記したみたい。まずは小学生の頃の話だ。

 長い休みには、両親の生まれ故郷である秋田の親戚の家で過ごした。八郎潟という干拓エリアなので、秋田ならではの雰囲気は皆無だ。ただ、家は広い。こちらでは小さい家で暮らしていたので、そこで過ごすのは楽しかった。とは言え歳の近い親戚は日常の生活があるので、僕と遊んでくれない。

 暇を持て余した時に目に止まったのは「恐怖新聞」と、日野日出志の短編集だった。恐怖新聞はネタ感のあるホラー漫画なので、ビビリな僕でもそこまで怖くはない。ただ、日野日出志はちゃんと怖い。人が出かけた無人の広い家で読んでいると、昼間だというのに鳥肌が立つほど怖かったものだ。

 その後、中学生となった僕は、まだまだ現役の怖がりだった。友達の家で勉強会と称して集まった時など、怖い話をされて家に帰れなくなって、そこにいた仲間全員に近所まで付き合わせた。僕の言い分は「勝手に怖い話をしやがって、怖くて帰れないじゃんか」と逆ギレして付き合ってもらった。

 さらに大学生になって、寮の同部屋の同級生が怖い話をしたがるヤツだったので、何度も怪談を聞かされた。毎度、最後に「お前だ!」とか大きい声を出してビビらされ、その都度ナイスリアクションをする僕を笑っていた。パターンのある怪談なのだが、つい引き込まれて過剰反応してしまった。

 社会人になって本を読むようになり、その中で京極夏彦の「京極堂シリーズ」という連作を読んでからホラーの呪いが解けたのだ。その本を読んでなくても、経年劣化による感情の摩耗によって怖さは目減りしていたとは思うが、その時期を早めてくれたのが京極堂だ。怖がりな人にはオススメだ。

乳房のようなタンクに心を和ませて、ホラー的な呪いから解放されたいと思う。