MUONのYAON

 外出の際の必需品は、イヤフォンと文庫本。どこに出かける時も、これさえあればストレスなく過ごせる。僕にとってマストアイテムなはずなのに、外出前にバタバタすると必ず忘れてしまう。しかも高頻度で両方忘れる。このふたつのうち、どちらかと言うとイヤフォンの方が僕の重要度は高い。

 今もイヤフォンと文庫本を忘れてバスに乗っている。パソコンを持ち歩く時に、この手の忘れ物が多い。普段は持ち歩かないので、イレギュラーな行動がレギュラーの持ち物に影響している。割と大荷物なのに、バッグの中には肝心な物が入ってない。まったく幸先の悪い出だしにゲンナリとする。

 でも、イヤフォンを付ける行為はある種の防御のようにも思える。周りからの音をシャットダウンすることで、自分だけの世界を守るようなニュアンスだ。外界の雑音を断つことで、部屋にいるのと同様のリラックス空間を手に入れられる。それは錯覚だ。でも、自分を騙した方が楽な場面もある。

 僕は自意識過剰なところがあるので、周りの目はある程度気になる。だから、他人の話し声が聞こえると、その内容に傾聴してしまう時がたまにある。僕の悪口を言ってるとは思わないが、誰かに対する悪意がないかと警戒してしまう。性善説を信じてないので、すべての声が悪だくみに聞こえる。

 それもこれも、僕の耳がイヤフォンで塞がっていないからだ。聞こえなければ気にならないのに、うっすらと聞こえる声のトーンに感情を揺さぶられている。イヤフォンさえあれば、ゴキゲンな音楽で気分良くバスの揺れに合わせられるのだ。ちなみにボリュームの設定にはかなり気を使っている。

 公共交通機関を使っていると、ある程度ボリュームを上げないと聴こえない。イヤフォンの音は聴こえなくても、なぜか車中の会話は漏れ聞こえてくる。肉声の強さか、はたまた僕の周りには生声ラウドな輩しかいないのか。とにかく、音漏れが心配な程度に音量を上げるので、聴力が落ちてきた。

高速道路ではほぼ歌っている。なぜか高速走行中に限って強い眠気に襲われる。