ずっと壊れたイヤフォン

 先日、イヤフォンをポケットの中に入れっぱなしにして洗濯してしまい、見事に壊れた。また買わなきゃいけないなぁと思いつつ、暑いからあんまり出かけたくないので放置している。次はポケットに入れられないようなヘッドフォンタイプにしようか、いや暑苦しいから前と同じタイプで良いや。

 そんな感じなので、いま出かける時は裸眼ならぬ裸耳である。バスや電車での他人の声が聞こえてしまうので、集中力が散漫になる。大声で話す団体は、まず「うるせーな」と思い、その後は会話の内容に聞き耳を立てる。どんなに耳を澄ませても、集中力散漫な状況では何ひとつ聞き取れないが。

 僕が他人の会話を聞く時に求めているのは、いわゆる聞き間違いである。言葉の響きの面白さにホッコリしたいのである。だから、うるさく感じつつも大声の団体というのはネタ元としては使えるのだ。こちらも積極的に聞き間違えて、意外と似ている言葉を探している。特殊な耳の使い方である。

 このクセは小学生の頃に身についた。ダジャレを言いたくて、あえて半分で話を聞いていた件については前にも記したと思う。そんなクセがついたとは言え、手に入れた聞き間違いを披露する場所はあまりない。どちらかと言うと、その場で面白がる密かな趣味だ。メモを取るほどのものでもない。

 その中で、記憶の片隅に残っていた聞き間違いワードを見つけた。かなり前に韓国の連続ドラマが流行った際の「韓流ドラマ」という言葉を、当初「搬入ドラマ」と勘違いしていた。たぶん倉庫でバイトしていた時期のことで、連日搬入されるコンテナの段ボールが鬱陶しくて、連想したのだろう。

 コンテナ1台を荷下ろしして、その荷物を検品係の場所まで移動する。または、出荷のスケジュールに合わせて規定の保管場所に移動するのが仕事の流れだが、この作業にドラマ性を感じたことがなかったので、そんな日常をドラマ化できるクリエイティビティに感心したのだ。だから覚えている。

聞き間違い探しと同様、僕のライフワークのひとつが錆びた写真集めである。