米食の人民に必須の成分

 初期衝動というのは厄介なもので、何十年も引きずってしまうらしい。中学生の耳で摂取した当時のポップスが、僕の音楽体験の基礎になっている。僕はファンキーなものが得意じゃないと自覚しているが、その頃の音楽体験によりほんの少しのファンクが刷り込まれている。それが米米クラブだ。

 今朝起きた時から、ある歌の断片が頭の中でループしていた。それは米米クラブの曲なのだが、ワンフレーズしか分からないので検索に引っかからない。だから、さっきからアップルミュージックでファーストアルバムから聴き返している。記憶の深さから考えて、間違いなく初期のアルバム曲だ。

 結局、その曲は難なく見つかったのだが、聴き返しているうちに気持ちが中学生時代に戻ってしまった。目当ての曲以外の、あの頃大好きで何度も聴いていたアルバムをさっきから聴いている。当時は大人気だったボウイが解散した喪失感があったと思うのだが、それを補って余りある存在である。

 米米クラブは、とにかくバラエティ豊かという印象がある。ベースがブンブンいってるしホーンもたくさん入ってくるのでファンクなんだと思うのだが、歌メロには黒っぽさをあまり感じない。どちらかといえば歌謡曲的なメロディだと思うのだが、その幅がバラエティ豊かと感じさせたのだろう。

 フロントマンのサービス精神から、軽く見られてしまうこともあっただろう。僕も次第にシリアスな音楽の方が「偉い」みたいな感覚にとらわれてしまい、高校生になると聴かなくなってしまう。その後、ドラマのタイアップなどで大ヒットするので、街のBGMとしては何度も聴くことになるが。

 思春期の潔癖さもあって聴かなくなってしまったが、いまに至るまでいろんな種類の音楽を「なんでも聴いてみよう」と思わせるキッカケは米米クラブにあったような気がする。コミックバンドに擬態してめちゃくちゃいい曲を演奏するバンドというギミックが、僕に面白がる精神を教えてくれた。

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面白がる精神を持続していれば、いつか夜の街で素敵な出会いがあるだろう。