ホップでキャッチボール

 暑い夜をやり過ごすために、どうしても酒場に出向いてしまう今日この頃。昨夜も酒場を経巡って、最後に辿り着いた店で謎の野球談義が勃発。カウンターに居座る3人の男は、それぞれ違うチームのファン。その中で、現在首位独走中のチームのファンを吊し上げるような格好になってしまった。

 まあルサンチマンというヤツで、野球を観ていて何より嬉しいのは自チームが強いことに他ならない。僕が熱心に応援するようになって以降は、僕の推しチームが強かったことがない。だから、羨ましい境遇だ。昨夜の試合では首位チームと僕の推しが対戦して、延長10回に勝ち越されて負けた。

 延長で負けた時の徒労感は酷く、まったく無駄な時間を過ごしたかのような錯覚を覚えてしまう。でも勝ち負けは置いて、延長までもつれるということは接戦なので、良い試合なのだ。ドキドキを持続することは得難い経験だ。総力戦の末に、最後に相手側に勝ちが転がり込んだというだけの話だ。

 そんな風に割り切れない僕のような中年が、気持ちよく延長戦を制したチームのファンと肩を並べて飲んでいる。僕は普段あまり個人攻撃をしないように努めているが、酔いの力が攻撃性を呼び起こしたらしく、もう一人の別のチームのファンが、首位チームへの不満をぶつけるのに加担していた。

 まあ、こんなふうに記すと二人で一人を責めたように感じられるが、実際はワイワイ騒ぎながら飲んでいただけのことだ。気がつけば、その店の閉店時刻を大幅にオーバーしていた。最後に一杯ずつ店側からビールを振る舞われたのだが、あれはたぶん「もういい加減に帰りな」のサインだと思う。

 昨夜いっしょに飲んだ彼らのことは、もう覚えられたぢろうか。飲酒時の記憶力が絶望的に終わっている僕だけれど、彼らとは何度も会っている(らしい)ので、もう完全にインプットされたはずだと信じたい。あんなに楽しい夜を共に過ごした野球仲間(観るだけ)を忘れるなんて悲しすぎるよ。

僕の記憶の森には枯れ木ばかりで、何も目印がないから迷ってばかりなのだ。