最初で最後のエモーション

 いつ頃からか「エモい」という言葉を聞くようになったが、最近この言葉を使う時に、みんな半笑いで言ってるように思われる。死にかけている言葉なのだろうか。世代間の断絶がある言葉なので、若い人にとっては終わりかけの言葉で、僕くらいの世代だと正しく使えたことが一度もない言葉だ。

 自分でも合っているのか分からないでエモいを使うので、僕の場合は照れて半笑いになってしまう。とりあえず何でもエモいと言っておけば良いや的な、投げやりな使い方なのだ。それを逆に指摘されて「それはエモくないよ」と言われたいのだ。そうされることで、正しいエモさが分かるはずだ。

 エモいってのはエモーション、エモーショナルから来てるのだろう。意味は「感情」になると思う。最初に僕がエモーションに出会ったのは、日本のバンド・ボウイの「ビート・エモーション」というアルバムだ。今さらながら「ビート・ジェネレーション」という言葉にかけていると気がついた。

 このアルバムがエモーショナルかと問われると「分からない」としか答えようがない。ここではエモーションという言葉の響き、カッコよさだけが印象に残る。とは言え、この言葉が一般的に使われることはなかったと思う。それから僕がエモーションに再会するのは、古いソウルの批評文の中だ。

 オーティス・レディングのアルバム評を読んだら、そこに「ソウル界で最エモーショナルな声」との記述があったと記憶している。曖昧な記憶だが、その文中ですでに「エモい」との表記があったような気がするが、これは記憶の改ざんかもしれない。ただ、エモーショナルの具体例は提示された。

 音楽ジャンルの「エモ」というのは、ネットで調べたところ80年代のパンクバンドにルーツがあるらしい。メロディアスなハードコアパンクの一群らしいが、これが後年のメロコアあたりに変わるのだろうか。まだまだ分からないことは多くある。とりあえず、分からない言葉は使わないに限る。

古い雑誌の広告には、懐かしいはずがないのだが、心に響くサムシグがある。