夜に置いてきぼり

 昨夜のことを覚えていない。酒場で飲みすぎたからだ。まだらに覚えてるのは、シャックリが止まらなくなったことだ。いや、むしろシャックリのせいで記憶が鮮明に戻ったのだ。僕はシャックリを止めるのが下手なので、何日もヒクヒクし続けてしまう。そのことが憂鬱で酔いが覚めたのだろう。

 今朝、二日酔いの痛みで頭を抱えながらスマホを見ると、友達からメールが届いていた。その文面を見ると、僕の問いへの返信となっている。その質問メールを送ったことを完全に忘れていた。文面を読んでも何のことだかサッパリ分からない。頭痛がうすまるとともに、昨夜の記憶が戻ってきた。

 ちょっと気になって財布の中身を確認してみたら、思ったよりも減っていた。記憶ないくらい酔ったわけだから、それなりに散財したのだろう。でも、いつも行く酒場のハシゴコースなので、記憶なしでも見当はつく。いつも払い忘れたような気がしてしまうのだが、珍しく払い過ぎたのだろうか。

 まあ払い過ぎることはないので、単純な飲み過ぎだと思う。いつもゆっくり話したいなと思っていた常連客と隣り合わせになったので、割としっかり話したと思う。でも、ほとんど何を話したのか覚えていない。ただ、その会話の中で出てきた質問が分からなくて、友達にメールで聞いたのだった。

 最後の店では、いつもご機嫌な夫婦がカウンターにいたので話しながら飲んだ。もちろん何を話したかは覚えていないが、そこで何を飲んだのかも覚えていない。彼らに失礼なことを言ってなければ良いが。そこでシャックリを発症して、店のお姉さんが「絶対に効く」と豪語する止め方を試した。

 前にも勧められて試した気がするが、酔っているので「今回は効くかも」と期待してチャレンジしてみた。つまり前回は効かなかった。コップの水を上顎から飲むというアクロバチックな方法だ。やってる時は効きそうな気がするのだが、果たして今回も効果ゼロだった。ただ、今は止まっている。

景色を見て感動した時は写真に撮らずに記憶に留めたい。でも、忘れてしまう。