熱視線の先にあるもの

 昨日は横浜スタジアムに野球を観に行った。桁外れにゴージャスな席を飲み仲間が斡旋してくれて、酒場の常連たちと連れ立ってのプロ野球観戦である。ホームチームを応援する者は2人だけ、その特別な席を斡旋してくれた人と僕だけだ。それ以外の人たちは、この非日常の世界を楽しみに来る。

 もっとスペシャルな場を味わうべきだとは思うのだが、つい試合に熱中してしまう。祈るように、食い入るように見守っている。序盤にリードして気持ちを緩めていたら、中盤から追い上げられて同点まで追いつかれた。そこからは目が離せない。トイレに行くのも我慢して、戦況を見守り続けた。

 8回の裏に代打の選手がヒットを打って勝ち越した。1点差で迎えた9回表、抑えの切り札がマウンドに向かう。この登場シーンは特殊な演出が入る。場内の照明が落とされて、平時ならばこれからマウンドに上がる投手の名前が連呼される。コロナ禍の運営なので、現状では声は出せないのだが。

 ちなみに相手のチームとは、今年は殊更相性が悪い。開幕カードで3連敗して以降、苦手な印象を拭えずにいた。だが、年間での勝ち越しに王手をかけられた状態で、この3連戦で3連勝をもぎ取った。つまり、昨日の現地観戦も今日の試合も勝った。推しチームが勝つ、こんな嬉しいことはない。

 勝ったときも、負けたときも、最近の僕の思い入れは異常だ。たぶん、自分の趣味が充実していないからだろう。そのせいで、プロ野球という代理戦争に全力ベットしているのだ。別に重課金しているわけではないが、普段の機嫌を左右される程度の依存は軽度ではない。ちょっとだけ注意したい。

 思い返せば、30代半ばまではラグビーをプレーできていたので、スポーツ観戦自体に熱くなれなかった。ラグビーですら、観ているのは苦痛だった。もっと自分主体だったということだろう。その主体が動けない以上、他人に乗るしかない。乗った船には、なるべく遠くまで連れて行ってほしい。

抑えピッチャー登場時の特殊演出。試合の途中なのでビジターチームは引く?