ナイトライフの後方支援

 我々は自分の言葉で説明できないものに頼って、日々の暮らしの快適性を手に入れている。科学的な根拠のないものは怪しいと思って生きてきたのだが、すべての現象に対して科学的な解説ができるわけじゃない。それでも、なんとなく「効きそう」というレベルで便利グッズを使って生きている。

 むかしから、夏になると蚊との熾烈な生存競争が繰り広げられる。暑いので窓を開けて寝るのだが、網戸の隙間から蚊が侵入して安眠を妨げる。耳元で飛ぶので羽音が煩く、結局その1匹を仕留めるまでは眠れない。そして、仕留めた後も別働隊が動き出して、果てない戦いを繰り返すことになる。

 蚊取りグッズの定番は蚊取り線香だが、寝床でアレを使うのは躊躇われる。煙いからだ。蚊取り線香の匂いは夏の風物詩的な、ちょっとだけノスタルジーを思い起こさせる部分がある。でも、それは親戚の家の広い客間で寝るときに遠くから香ってきたからだ。スペースがあれば煙たくはないのだ。

 現在、自室ではリキッド式の蚊取りグッズを使っている。コンセントに接続して置いてあるだけだが、これを使ってから部屋で蚊の羽音に悩まされたことがない。侵入防止なのか、リキッドの成分による駆除なのか分からないが、とにかく効果はあるようだ。ただ、駆除だとしたら少し心配である。

 このリキッドの成分を無防備に寝ている僕も浴びているのだろう。きっと無害だから商品化されていると思う反面、その根拠は何もない。ただ、初手から「人間の体に害がある成分を拡散するような商品が市販されるわけない」と思い込んでいるに過ぎない。ここまで考えた今でも、調べていない。

 そもそも蚊取り線香の成分ですら、ちゃんと分かってない。アレに関しては人間でも苦手な人はいるだろう。蚊取り線香を人間のサイズに合わせて巨大化すれば、人間の駆除にも効果はありそうだ。そう考えると、成分量の問題なんだと想像できる。ここに記したすべては想像で、個人の感想です。

路面に面した建物は、玄関ドアからいきなり中の人が飛び出してきそうで怖い。