空想楽団ワールドツアー

 僕は何ひとつ楽器を弾けない。歌も上手くない。ついでに言うとダンスも踊れない。それでも、ずっとバンドをやりたい願望だけはある。とは言え現実に「組もうよ」と誘われてしまうと困り果ててしまう。ただ、死ぬまでバンドをやりたいと言い続けていたいだけなのだ。アティチュードの話だ。

 できれば僕と同じ程度の実力(つまり、弾けない歌えない踊れない)の人間で、それでも音楽が好きな仲間を集めることができれば、エアバンドとして活動できる。エアバンドの活動としては、まずはコンセプトを決めるための飲み会が必須になってくる。お互いの音楽的嗜好をすり合わせるのだ。

 この飲み会でコンセプトが決まらない限り、バンドは走り出さない。そして、理想としてはコンセプトは永遠に決まらなくて良い。時には喧嘩寸前まで話し合いが紛糾したとしても、それもポーズなのだ。僕らはバンド的なエピソード作りのために活動しているのだ。記念受験のようなものなのだ。

 欲を言えば、バンドの名前くらいは決めたい。バンド名が決まったらロゴを作って、グッズも作りたい。バンドTシャツだ。僕らの活動は主に飲み会なので、その飲み会に来て行くユニフォームだ。そのうちバンド名がコンセプトと合わないとか言って、バンド名を変更することを「解散」と呼ぶ。

 メンバーは不動な方が理想的だが、増えたり、都合で来れなくなる人間も出てくるだろう。あと、こんな活動を本当に続けていたら、実際にバンドをやりたくて楽器をはじめる人間も出てくるだろう。バクチクのようにずっと同じ5人のメンバーで続けると言うのは奇跡のようなことに思えてくる。

 なかなか僕の理想のエアバンドには辿りつけなさそうだ。バンドの構想として良いコンセプトが生まれたら、それをSNSに上げて誰かに譲っても良い。バンドのプロットだけを考える謎のコンセプト集団なんて面白そうだ。いや、もうすでに存在しそうだな。とにかく飲み会の口実が欲しいのだ。

f:id:SUZICOM:20210122131338j:plain

バンド仲間にPV撮影のロケハンと称して朽ちた建物見物に行くのもアリだ。